6AQ5 プッシュプル 8W+8W ステレオパワーアンプ
2023/5 製作 2024/12 掲載
1930年代に6L6とほぼ同じくして開発された6V6と同じ電気特性のユニットを、そのまま7pinミニチュア管に収めたものが、6AQ5/EL90です。
6AQ5/EL90は1940年代末期には登場しており、ミニチュア管に収められたパワー管としては、6AR5(41/6K6のミニチュア管版)に次いで、歴史のあるパワー管です。
もともと非常に特性が良いことでオーディオ分野のみならずあらゆる小型アンプセットや業務用機器に多用されていた6V6を、そのまま小型化したパワー管として、
機器の筐体サイズをさらに小さくすることに貢献、放送局やスタジオのコンソール内臓のプレイバック機から、多くの普及型ステレオ機器に使用されました。
またミニチュア管は周辺回路を含めた高周波特性に優れており、発信機や送信機、テレビジョン分野のみならず、より小型で質の良い高周波領域への技術推進に大きく貢献し、
そして、手ごろな価格で入手できるパワー管として、当時、はじめて真空管に触れてこの6AQ5でアンプやラジオを組み立てた思い出のある方も多く、
その後真空管から半導体/トランジスターへ移行する最後まで、
真空管式の機器と今日の電気回路技術の基礎を支えた、まさに「小さな立役者」であるのが6AQ5/EL90です。
本機は、歴史と愛嬌のある真空管6AQ5を最大限に生かすオーディオアンプの構想を期に、
出力にゆとりのあるプッシュプル動作にて、十分な音楽的ダイナミクスがあり、カソードNFB巻線を設けた専用設計の弊社オリジナル出力トランスとの組み合わせで、
この小さな見た目からは想像できない、豊かな音楽表現が楽しめるパワーアンプとして製作いたしました。
シャーシのサイズはできるだけコンパクトに、往年のヴィンテージアンプさながらの雰囲気を醸し出すことをコンセプトにして、オールアルミニウム製の金属シャーシを採用、
全面シャンパンゴールドハンマートン塗装により、一段と風格のあるシャーシ仕上げといたしました。
トランス類は、弊社のオリジナルトランスに用いるアーミーグリーン縮み塗装のカバーを使用しております。
弊社のアーミーグリーン縮み塗装は、見る角度や光の条件により色合いと表情に変化があり、
つねに違う印象をもたらすことでアンプ全体の存在感を引き立てます。
また自然界に織りなす色合いと近似しており、電気製品、オーディオ機器という人工的・固定的で冷たいイメージではなく、
とくに「真空管」の灯す仄かな光とマッチした、柔らかく、安らぎの印象を与えます。
使用真空管は、初段管に5極3極複合管でオーディオ用途に特化して設計された6AN8、出力管に6AQ5/EL90、
そして純粋な真空管式の音質を大切にするため、電源部は半導体のダイオード整流を行わず、
整流管の6CA4/EZ81を2本ダブルで使用しています。 一切の半導体を用いない真空管アンプとしています。
多くの真空管アンプでは、電源トランスと整流管の能力によって出力電流が制限されることがとても多く、
とくに小型のアンプではスペースや予算の都合上、その意向が強くなり、十分ではない電源環境で設計されたものが多くみられます。
電源環境が貧弱になると、当然ながら音声増幅部の動作が制限されて、音が詰まり気味でスケールの小さなサウンドになる傾向が大きいです。
そのため本機では、とても小さな出力管6AQ5を使用しながらも、この真空管の能力を最大限ドライブできることと、アンプ全体のコンセプトに合った、豊かで味わいのあるサウンドを得るために、
電源部設計にはとくに注意を払い、整流管をダブルで使用して十分以上の電流供給能力・余裕を有しております。
インプットは、ライン入力(CD・AUXなど) 1系統(100kΩ/ボリューム付き)、 出力インピーダンスは4-8-16Ωに対応しております。
音質の要となるトランス類は、このアンプにベストマッチングするように、
弊社で特別に設計製作したものを搭載しております。
特に出力トランスにおいては、カソードNF専用巻線(3次巻線/CNF巻線)および、第2グリッドのウルトラリニア接続タップを設けた専用設計のトランスを製作・使用しています。
カソードNFB(CNF)は、6AQ5の両カソード間に直接NFBを掛けることにより、
そのままではハイインピーダンスであるビーム管接続時の内部抵抗を純3極管なみに低下させています。
この方法は、ビーム4極管ないし5極管の3極管接続またはウルトラリニア接続のように、管内部帰還により出力を犠牲にして特性を得ようとするものとは根本的に異なり、
ビーム管または5極管接続時の規定出力のままで効率よく内部インピーダンスを低下させることができます。
また、プッシュプルアンプでは通常のオールオーバーNFBより歪みの打ち消し効果が高くなり、球のアンバランスに対して強くなる特性がございます。
しかしこのカソードNFB方式には特殊な巻線を必要とするために、
優れたNFB方式でありながら、現在ではほとんど使用例はありませんが (トランスが無くて製作不可能なため)、
当方の持てるトランス製造技術を生かして、今回のアンプには専用設計のトランスを惜しみなく搭載しています。
また、今回搭載のトランスはさらにウルトラリニア用のタップを設けており、
これは音質的に、往年のヴィンテージアンプの名機のほとんどがウルトラリニア接続によって、その豊潤で滑らかで味わい深いサウンドを作り出していることに習い、
とくに6L6や6V6系列のビーム4極パワー管は、経験上そのような音質キャラクターをウルトラリニア接続によって良く生かせるため、
本機では先述のCNF帰還方式と併用して、ウルトラリニア接続回路を採用しています。
トランスについては、このような真空管と回路・電気的動作のマッチングはもとより、
求める音質、見た目のデザインに至るまで、行き届いた設計のトランスを搭載することが弊社で作るアンプの最大の特徴でございます。
これにより、真空管の能力と音質を最大限に生かすことができ、真空管式ならではのとても良い音をご提供いたします。
内部配線は、後のメンテナンスの際にもすぐに対応できるように、すっきりと丁寧に配線することを心がけています。
それにより、電機の流れが交錯することがなく、とくにステレオアンプにおいてチャンネルセパレーションが悪化することを最小限にし、
周波数特性も良好となり、雑味の無い、なめらかで素直なサウンドが得られます。
ボリュームつまみは、弊社工房にて一つ一つ、真鍮丸棒から削りだして製作をしております。
今回は、アンプ製作のコンセプトに合うよう、アンティーク仕上げといたしました。
ツマミのデザインはアンプにとって非常に重要なファクターです。使用するアンプによって0.1mm単位で寸法を変えて、一つずつ旋盤で削りだして製作しており、
また真鍮ムク材のため、重みがあり、普通のプラスチックやアルミ製のものより共振に強く、これ一つで圧倒的な高音質が得られます。
シャーシ正面メーカーロゴや、上面の番号レタリングは、すべて手作業でハンドペイントしております。
ハンドペイントは規格のフォントには存在しない書体ですから、一台一台オンリーワンの味のあるデザインとなります。
使用する色も全体の雰囲気に溶け込む色を選び、心をこめて文字を書き入れております。
音質の傾向は、丹精でキビキビとした6V6譲りの反応の良さを適度に感じさせ、かつ往年のヴィンテージアンプからフィーチャーしたイメージの通り、
ほのかな懐かしさがあり、味わい深く、とても安心感のある、なめらかなサウンドです。
6AQ5を使ったアンプ構想から回路設計、デザイン構想、トランス設計製作、使用パーツの選定、組立仕上げまで、
すべて一貫したイメージのとおりに製作を行った真空管アンプです。
真空管というデバイスにイメージする感覚や、オーディオ機器というより、コレクションに近い感覚からの発想を大切にした、
小型で十分以上の音楽鑑賞ができる真空管アンプに仕上がりました。
今回商品に標準付属する真空管は、もっとも信頼のおける国産・東芝製のものを、前段および出力管に使用しておりますが、
とくに6AQ5は、世界中のあらゆるメーカーが製造した真空管ですので、ヴィンテージ管でも在庫は豊富でかつ安価に入手可能です。
特性の揃った4本クワッドであれば、無調整で差し替えが可能ですので、
いくつかの異なるメーカー製のコレクションがあれば、なお一層このアンプで音質の違いを楽しむことができます。
6AQ5 プッシュプル ステレオパワーアンプ | |
仕様 | 入力1系統・ボリューム付き(真鍮削りだし・アンティーク仕上ツマミ) 出力 4 - 8 - 16Ω バナナジャック対応 電源100V ACINPUT 消費電力100W(50/60Hz) 最大出力 8W + 8W(RMS) 周波数特性 30Hz-1db ~ 20kHz-2db、30kHz-4db シャーシ オールアルミニウム製 /シャンパンゴールドハンマートン焼付け塗装 ハンドペイントレタリング トランス 出力トランスは専用設計・手巻きトランス使用。 電源トランスは弊社製品N-200S使用。 アーミーグリーン縮み焼付け塗装 サイズ W 300mm、D 200mm(スイッチツマミ等含まず)、H 165mm(電源トランス頭頂部まで) 重量 約8kg 付属品 なし |
使用真空管 パワー管 6AQ5/EL90 ×4 (東芝製) 初段管 6AN8 ×2 (東芝製) 整流管 6CA4/EZ81 ×2 (RCA製) |
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保証 | 御買上日より3年間。 ただし真空管については、使用による自然劣化は保証対象外です。 その他保証対象外となる場合は以下の通りです。修理・メンテナンスの際は費用を御請求させていただきます。 本来の使用法以外に使用された場合。 想定以上の使用法(つねに最大音量での使用等)・長時間使用による故障の場合 (想定使用時間:一日4時間)。 ホコリの多い場所、湿った場所、直射日光の当たる場所、通気の悪い場所など、環境の悪い場所でご使用された場合。 弊社以外で分解・メンテナンスをされた場合。 分解、改造等、お客様により本品に手を加えた場合。 真空管を誤ったソケットへ装着して通電した場合、また抜き差しの不手際による故障。 指定真空管を御使用されなかった場合。 また、弊社の判断にて、修理・メンテナンスの際の別途実費をご請求させていただくことがございます。 |
価格 | 売約済み ※上記記載の標準装備の真空管付属 |
本機とおなじもの、もしくはご希望に応じた仕様にて新規製作をいたします。
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eightrictrans@arrow.ocn.ne.jp
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電話 052-908-0066 / FAX 052-503-5560
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