ECL86/6GW8 プッシュプル 10W+10W ステレオアンプ


今回は、ヨーロッパ生まれの高性能5極3極複合管のECL86/6GW8を使って、
その真空管の良さを存分に発揮する真空管アンプを目指して製作いたしました。
ECL86/6GW8は、同様の5極3極複合管で有名な6BM8/ECL82のハイパワー版ともいえる真空管で、
データシート上ではプッシュプルで15W前後も出るという優れた真空管です。
日本国内ではそれほど出回っていないようですが、
ヨーロッパ生まれ独特の暖かなトーンが魅力の真空管です。









アンプ全体のデザインは最も使用しやすいタイプを選択し、頑丈な鉄製シャーシにシルバーのハンマートーン仕上げです。
前面にはちょこっと贅沢をして、オイルフィニッシュを施したチーク材を装着しました。
木材を使うと、より真空管アンプらしい温かさが生まれてきます。

ボリュームつまみは、真鍮ムク材より旋盤で削り出した、当方オリジナル品です。










入力はRCA端子、出力は4Ω-8Ω-16Ωに対応しています。

電源トランス・チョークトランスはこのアンプ用に特別に製作し、
アウトプットは当方既製品のPS-102を使用しました。






今回使用した真空管は、ドイツ・ハンブルグで製造されたVALVO(バルボ)製のECL86と、
同じくVALVO製のEF86/6267 メッシュプレート。
整流管はヴィンテージRCA製の5U4GBです。
ヴィンテージ管がずらっと並んでいる姿を見るだけで、贅沢な気分になりますね。

VALVO製はあまり聞かない方も多いと思いますが、
SIEMENSやTELEFUNKENなどと同様、ドイツの真空管を語る上では絶対に欠かせない、大変重要な存在です。
後年はPHILIPSグループになったので中身はPHILIPS製というものも多数存在しますが、
今回使用した真空管はすべてドイツ・VALVOのハンブルグ工場製です。









今回はできるだけヨーロッパ管の良さを出したかったので、回路設計・配線や、
使用するパーツ類も可能な限りヨーロッパ製のヴィンテージ品を使用しました。





このアンプの回路はヨーロッパらしさを引き出すため、ムラード型位相反回路を採用し、
またEF86-ECL86(T)-ECL86(P)と、配列もムラードのオリジナルに忠実に沿って設計。
しかしオリジナル回路ではゲインが非常に高いので、EF86は3結にて使用しています。

使用したパーツは、非常に音質の良いヴィンテージ・ムラード製 “マスタード” や、入手困難なドイツ製の電解コンデンサなど。
また配線材は、出来る限り「単線」を使用して、ヨーロッパ製のヴィンテージ機器さながらの
音質の良さと回路の安定性を狙いました。










最大出力は10W+10W(ノンクリッピング) です。 僅かに控え目な使い方としたので
トランスの出力キャパシティにも良くマッチングし、雑音ノイズも少なく、安定した動作となっています。
NFB量は全体で約12db。 ムラード型のオリジナルでは20db以上のNFBが掛かっていますが、
そこまで深いNFBをかけると音が沈んでしまう感じがあったので、試聴を重ねた上、12dbの値に決定しました。 
またこれによって若干入力感度が高くなっていますが、
プリアンプを使って駆動すれば丁度良い音量が得られます。 ( CD直接入力だと若干ゲインが大です。)



音質的の方は、すべてヴィンテージ管でそろえたことと、またヴィンテージ管の良さを存分に発揮する回路設計によって、
非常に魅力的な音質に仕上がりました。
これは現代のハイエンド機器などではチョット得られない領域の音質だと思います。
トランス類のマッチングも最高に良く、真空管を十分にサポートしてくれています。

音の中に何か香りが感じられ、音楽のゆったりとした流れや表情の描写が豊かで、
また10W出力とは思えない、しっかりとコシのある音像が特徴です。
「こんな小さな真空管からこんなに良い音が得られるのか?」 と、ECL86という真空管を改めて見直しました。


       

Manufactured by Eightric Transformers, Nagoya, Japan.
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