真空管「6L6」について
6L6とは・・・ 1936年にアメリカRCA社で開発された、世界初のビームパワー管です。
それまでのパワー管は、直熱3極管や初期の傍熱5極管がメインですが、
それらは当時の技術での性能に限界があり大きな出力を得るのに大変苦労したり、
取り扱いがデリケートで断線をはじめとする故障が多く、信頼性の点でもあまり良くないことが多いものでしたが、
電極にはじめてビーム成形翼を持たせた6L6の登場によって、初めて2本でプッシュプル20Wを超える出力を簡単に得ることが出来、
また最初から極めて行き届いた電極設計や余裕のある動作規格の設定によって、
動作のリニアリティ、歪率などの諸特性が格別良好で、固体のバラツキが少なく、しかもロングライフで故障が少なく安心して使えるという
非の打ち所のない球として、その後の真空管開発に大きな影響を与えて、歴史の1ページに堂々刻まれた優秀な真空管です。
6L6の一番最初の姿は、真空管と聞いてイメージするきれいなガラスの球ではなく、「メタル管」というものでした。
これは、ただ単にガラス管に金属の筒を被せたものではなく、メタルの筒そのものが管壁になっているものです。
開発当時は軍事用途や業務用途で信頼性の高いものが求められた背景もあり、少々乱暴に取り扱っても破損することなく、
放熱性がよく、機器の設置スペースをとらず、生産性が良く、安定した品質を目指した結果の姿です。
一般にあまり言われませんが、この中身の見えないメタル管の製造技術こそが、それ以降の真空管製造技術に大きく貢献したことは事実で、
GT管のボタンステム技術もミニチュア管技術もすべて、この6L6をはじめとするメタル管が原点といえます。
6L6はその使いやすさから、メタル管のほかにも、用途や、製造技術の向上によりさまざまな形のものが製造されました。
まず最初に、6L6メタル管と全く同じ電極ユニットを従来の2A3等と同じST管ガラスボトルに封じた「6L6G」が、
1937年頃から登場、
1940年代初頭には「6L6GA」という一回り小型のST管、
ガラス成型技術の進歩でストレートタイプのガラスボトルに封じた「6L6GB」、
そして、最大規格を引き上げ、より大きなパワーが得られるようになった「6L6GC」となります。
メタル管からすぐにガラスの「6L6G」が生まれた理由は、当時、メタル管は開発元のRCAとKEN-RAD社しか製造していなかったため、
他のメーカーはガラス管で作り始めたことが最初だと思われます。
その後はガラス成型技術や耐震構造が向上し、安定した製造技術とともに作りやすいガラス管(6L6GC)へと移行したものと思われます。
また6L6は様々な用途向けに「高信頼管」と呼ばれる球が数多く開発されています。
上写真のシルバニア製5932(6L6WGA)や、タングソル製の5881(6L6WGB)などがその筆頭で、
特に5881はオーディオ用パワー管として特化した小型・高信頼管として大変有名です。
6L6は型番や用途の違いだけではなく、世界各国のほぼ全ての真空管メーカーが製造を手がけた出力管であるため、
一つの型番(写真はすべて6L6G)だけでもご覧のように沢山のメーカー製が存在します。
メーカーによって内部の電極構造や材料、外観が少しずつ異なっており、もちろん出てくる音もそれぞれ違った個性があります。
また、同一メーカー/同一型番でも、製造年代によって作りが異なっていますので、それだけでもバリエーション豊富です。
下の写真の例では、すべてシルバニア製の6L6Gで左から1930年代後期製、1940年代前期製、1950年代初期製です。
すべてのメーカーやバリエーションを網羅することは難しいことですが、2、3種類の異なる種類のものが入手できれば、
聴く音楽に合わせて好みにマッチする真空管に差し替えるなど、1歩進んだ真空管の楽しみ方を味わえます。
それが比較的簡単に出来るのも、他の球より種類の豊富な6L6ならではの魅力でしょう。
時代の進んだ現在では、さらに高出力で見た目の良い他種類の真空管に影を潜めた感じの6L6ですが、
その使いやすさと丈夫な作りは他の真空管をいまだに圧巻します。
必要にして十分な出力や、使いやすさ、開発が古く歴史があるゆえ他の球には存在しない懐の深いサウンドなど
使ってはじめて分かる楽しみ・面白さが沢山詰め込まれた6L6。
はじめて真空管アンプを使いたいという方から、もっと深く真空管を楽しみたい方まで、
弊社で最もおすすめしている真空管です。
Manufactured by Eightric Transformers, Nagoya, Japan.
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