UY-807 プッシュプル 30W+30W ステレオパワーアンプ
2025/1
本アンプは、1940年代から現代に至るまで活躍し続ける実力派・高出力パワー管「UY-807/807」を使用して、オーダーメイドで製作させていただいたアンプです。
807といえば、どちらかというと無線をされた経験のある方には馴染み深く、業務用通信機や警察無線などの小型送信機、50~100WのPA機器などで大活躍し、
国内ではアナログ放送が終わる寸前までテレビ・ラジオ放送局でも使い続けられていた出力管ですので、
このクラスの出力管において、業務用にその優れた性能や使いやすさに肩をならべる真空管はないと言えるほどですが、
真空管オーディオ分野においては開発のすすんだKT88や6CA7/EL34などの、トッププレート式ではない「新型」真空管のほうが見栄えが良かったためか、
ピュアオーディオの各メーカーからは、807を生かしたフルサイズの大出力アンプはこれまでほとんど例がなかったものと思います。
しかしながらこの807は、1940年初期の開発当初かられっきとしたオーディオ用大出力・ビーム4極パワー管であり、
6L6/6L6Gより上位かつ最大のパワー管として長らく位置づけされていました。
プレート電圧最大750V、ビーム管接続プッシュプルAB1動作で最大70W、AB2動作で最大120Wという驚異的なスペックを誇り、
807の真骨頂はそこにありますので、今回は、その純粋なビーム管接続で大出力が得られ、
現代のオーディオシーンにおいて使用しやすいことや、貴重な真空管を無理せず安全に使用できる回路を1から設計を行い、
100パーセントオリジナルの807プッシュプルオーディオアンプに仕上げました。
シャーシレイアウト・デザインは、今回の出力管807は、他の出力管より高電圧で使用するため、
ステレオ構成において左右で配線経路が異なり特性に差異が出ることを避けて、左右対称タイプで設計、
すべての真空管がバランスよく配置され、フルサイズアンプの重量感や存在感のある全体のデザイン設計を行っています。
オリジナルの木製シャーシ製作には、ブラックウォールナットの無垢材を使用、
今回とても良質なトラ杢入りのブラックウォールナットが入手出来たため、この木目を生かしたシャーシに仕上がっています。
上面はシャンパンゴールドハンマートン塗装、ご好評いただいている弊社特別調色のアーミーグリーン縮み塗装のトランスカバーにより、
「オーディオ機器」のもつ無機質・冷たい・金属的などのイメージをもたず、
やわらかく自然で美しい、そして高級感と存在感のあるルックスに仕上がりました。
トランス類はすべて、本機の回路と、サウンドコンセプトにぴったり合うように弊社で専用設計したものを使用しています。
電源トランスおよび電源部は、メイン電源には大出力時の電圧降下が少なく、瞬間的な大電流に追従しやすい倍電圧整流方式を採用しています。
また、出力管807はプレート電圧とスクリーングリッド電圧に大きな差がでるため、
今回のアンプでは、とくにスクリーングリッド用に別の専用電源を設けて、電力ロスになるブリーダー抵抗や高圧回路からの供給をせず、
807のスクリーングリッド電圧供給にも特化した特別な電源トランスと回路を使用しています。
出力トランスは、本機の印加電圧設計や807の動作条件に基づいて、完全にマッチングするインピーダンスで設計・製作しております。
とくに、807がトッププレート式でありプレート配線を極力短くする必要があるため、シャーシを通さずトランスから直接プレートキャップ配線を引き出すように配慮、
そして純ビーム管接続による特性の良さを発揮するよう、多段サンドウィッチ・完全バランス巻線構造により、
非常に安定し、なめらかな減衰特性を得ています。
シャーシ内部はすべて手配線により、今回2電源ある電源部は専用製作した基盤を使用。
大型アンプでも少ない部品点数の設計により、パーツの陳雑がなくすっきりとした配線と、
それは直接、純粋な真空管サウンド作りにつながる工夫です。
ボールハットのツマミ等のアクセサリーもエイトリック工房で手作りしています。
製作には時間が掛かりますが、旋盤を用いて、真鍮丸棒から一つ一つ手作業で削りだし、アンプデザインに合うようにサイズや形状を変えて特別製作しています。
正面や上面のレタリングも、直筆で一文字ずつ心を込めて筆入しています。
使用真空管は、
出力管・東芝製UY-807、ドライバー管・6SN7GT、初段管・6J7(3極管接続)
すべての真空管は、正しく動作試験が行われた良品以上のペアー管であれば、
無調整で差し替え可能となっております。
最大出力は、30W + 30W (ノンクリッピング)
物理的な周波数特性は、20Hz(-1db) ~ 40kHz(-1db)、50kHz(-3db)です。
動作特性は、きわめて良好な周波数特性で、非常にフラットで優れた帯域バランスです。
807は本来、固定バイアスで使用した場合は50W以上の高出力を楽に得ることができる優れたパワー管ですが、
そのためには500Vを超えるプレート電圧供給が必要です。
現代の真空管アンプのご使用環境や、お客様による使用の保全・保守を考慮すると
数字上の大出力にこだわったアンプを作るよりも、安心・安全に使用ができて、
末永くご使用いただけるアンプを作ることが、より良い製品作りであると考えますので、
設計当初より最大出力は30W+30Wで、出力管807のバイアスは自己バイアス(オートバイアス)で真空管交換時の整備調整が一切必要なく、
最大印加電圧が500Vを超えない安全な回路設計において、弊社の専用設計・専用製作の電源・出力トランスなど、完全オリジナル・完全ハンドメイドで製作いたしました。
電源電圧は500Vを超えていないものの、他の出力管よりは高電圧を掛けているため、
高圧送信管類に共通した、迫るエネルギー感や強い温度感、明瞭で澄んだ残響感など、その特徴を生かしながら、
おそらくUY-807だけであろう、6L6Gを源流とする、地に足の着いた安定感抜群のサウンドが得られており、どんなスピーカー、どんな曲でも楽々聴かせてくれます。
すべての製作思想が一致したアンプ作りにより、
長らく業務用・現場で使用された実力派名球「UY-807」のもつポテンシャルを、最も身近に感じられるアンプに仕上がりました。
Manufactured by Eightric Transformers, Nagoya, Japan.
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