AC/PEN シングル 2.5W+2.5W パワーアンプ

2019/1

大変珍しいパワー管・AC/PENを使用したシングルアンプを製作いたしましたので
ご紹介いたします。

AC/PENは、1930年に英国MAZDA (EDISWAN) 社から発表された、傍熱5極パワー管です。 
特性は、米国の42 (UZ-42、6F6) に近いとされていますが、それよりも古い球で、後の大出力管6L6、EL34、KT88などに繋がっていく最初の真空管です。
1920~30年代は、各メーカーがさまざまなアイデアをもって真空管を開発していた時代ですので、情報が乏しく使用困難な球も多いですが、
それだけ未知の面白さがあると思いますので、
そうした真空管の中から、今回は歴史的にも大変貴重なAC/PENを使用して
この球の素顔に迫るシングルA級アンプを製作いたしました。





アンプ全体のレイアウトは、真空管をギュギュっと詰め込んだ感じにして、ブラックウォールナットの無垢材で製作したシャーシ枠と、
アンプ上面はシャンパンゴールドハンマートン塗装、トランスカバーはウォールナット材の色目に合わせたブラウンゴールドハンマートン塗装で仕上げました。














このアンプの回路は、シンプルな2段増幅回路で構成しています。
初段は中μ増幅率の AC/HL(英MAZDA製)、出力管AC/PENはこの球本来の動作とするため5極管接続で使用しています。
電源は、英MAZDA製の同時代の整流管UU4を使用して整流しています。





真空管を見ていただくと、出力管 AC/PEN はスクリーングリッド(第2グリッド)の端子がソケットの横についています。
当時はまだ電極数に対応したソケットが開発されていなかったのか、事情もいろいろだったのか、この球のユニークなポイントです。
(ちなみに、数年後にはB7型ベースが開発され、サイドグリッド端子を廃止したモデルに代わっていきます。)






電源トランス・出力トランスはもちろん、エイトリックトランス製・オリジナルの専用トランスを使用しています。
トランスは真空管アンプの音質を決める最大の要になりますが、すべてこのアンプの回路と真空管の動作に
ぴったりマッチングするものを独自設計しています。

今回は古い真空管を使用しますので、できるだけこの時代のトランスのつくりを再現しながら、
現代の音楽環境にもマッチするようにトランスの巻線方法や使用する材料を工夫しています。








シャーシ内部は各セクションに分けて、できるだけすっきりと配線を取りまとめ、
誰がみてもメンテナンスしやすいように備えてあります。
後にパーツの交換等を行う場合にも、目的のパーツのみを交換でき、他のパーツを掻き分けたり配線ミスを誘発をしないように勤めています。




★今回使用した出力管・AC/PENの拡大写真です★






1930年の開発、とても古い真空管です。
個人的には、今なお電気が通って、正しく動作するということがとても感動的です。
一つ一つのパーツは完全に手作りで製作され、不思議な形をしていて、接触することなく真空のガラスの中に浮かんで配置されています。
真空管は単なる電気のパーツでありながら、見れば見るほど、工芸品とか宇宙のようにも思えてしまう不思議な魅力に満ち溢れている思います。





AC/PENの仲間たちです。
左から英マツダ製 AC/PEN(新型ST管)、 英マツダ製 AC/PEN、 マルコーニ(オスラム)製 MPT4、 コーサー製 MP-PEN

この時代のペントート(5極パワー管)は日本ではほとんど知られていませんが、
AC/PENを筆頭に、それぞれのメーカーが挙ってペントートの開発に力を入れており、ヨーロッパでは大変ポピュラーだった真空管です。
基本的には互換球・類似球として作られたものが多いですが、それぞれ独特なデザイン、製法によって作られ、
バラエティーに富んだ音色を楽しませてくれます。

製造からやがて100年が経とうとしていますが、それが今となって、“趣味とロマンの真空管”という感じがいたします。


上に紹介しました真空管はすべて互換球ですので、
今回のアンプで差し替えて使用することができます。

また、前段球や整流管についても、同じように各メーカー製の互換球がございますので、差し替えて使用することができます。
(もしそれらの真空管にご興味のある方は、別途お問い合わせ下さい。)




最大出力は、2.5W + 2.5W (ノンクリッピング)
物理的な周波数特性は、30Hz(-1db) ~ 18KHz(-1db)です。
出力端子4/8/16Ω対応

古い真空管ゆえに能力に限界がありますので、大型スピーカーやドライブ力を必要とする環境での使用にはマッチしません。
ですが、素直で素朴なニュアンスの音色がして、とても真空管らしい温かな雰囲気に包まれる感じがいたします。
今回は英国マツダ製の真空管のみで構成いたしましたが、真空管のメーカーを変えればまた違った雰囲気の音色に変化します。
それぞれの好きな真空管の組み合わせや、聴く音楽とのマッチングや変化を楽しむための
趣味の真空管アンプに仕上がりました。


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