EL33・KT61 シングル 3.5W+3.5W ステレオパワーアンプ
2021/9 製作 2022/1/18掲載
1930年代から1950年代にかけて、ヨーロッパ諸国では、各メーカーが独自に開発した純5極管やビーム管が沢山発売され、
その中から今日に通じるEL34/6CA7や、KT66、KT88、EL84/6BQ5などの優れた真空管が誕生した訳でございますが、
それらの真空管以外に、その時に最も主力だった真空管というものもございます。その一つが、今回使用した EL33 という真空管です。
この真空管(および同等管)は、当時のラジオ出力電圧と、主力だったクリスタルピックアップの出力電圧に対応して、
少ない入力電圧で大きな出力を得るように設計されたハイゲイン・中出力パワー管で、とても浅いバイアス電圧で省エネ動作をしており、
ヨーロッパ中、とくにイギリスでは、当時のラジオセットや、プッシュプル10W程度の家庭用オーディオセットにて盛んに用いられた真空管です。
EL33と同時期にイギリス・マルコーニオスラム社(MO-V)から発売された KT61 という、有名なKT66の前身にあたるビームパワー管や、
エジソン・スワン社(Ediswan/Mazda)から発売されたビーム出力管 6P25、および 6P1 も、
EL33とほぼ同じコンセプト・動作規格にて開発された真空管であり、これらの真空管も同じくイギリスをはじめ、ヨーロッパではよく使用されました。
EL33をはじめ、これらの出力管は、欧州独自のアイデンティティに合わせて開発されたもので、
アメリカ規格のものや、日本の規格に合った真空管ではないため、とくに日本国内では取り入れられず、今日まで知ることの少ない真空管でございましたが、
現在はインターネットで世界の真空管が容易に入手できるようになり、
改めて、海外では当時主流であった音質の良いオリジナルの真空管がHOTになりつつあります。
このアンプは、当時ヨーロッパで活躍したイギリス・ムラード社のEL33を標準装備として、この真空管の音を存分に楽しめる真空管アンプとなっております。
シャーシは、ブラックウォールナット無垢材のオイルフィニッシュ仕上げ、使用する真空管のフォルムに合わせて、四隅をアール仕上げにいたしました。
シャーシ上面はシルバーハンマートン焼付け塗装です。
トランスの塗装色は、使用する真空管の時代と、このアンプの雰囲気にあわせて調色した、ブリティッシュグレー・焼付け塗装を施しております。
インプットは、ライン入力(CD・AUXなど) 1系統(100kΩ/ボリューム付き)、 出力インピーダンスは4-8-16Ωに対応しております。
音質の要となる電源トランス・出力トランスは、このアンプの回路にベストマッチングするように、
自社で特別に設計製作したものを搭載しております。
出力トランスは、今回使用した EL33 およびKT61、6P25の動作点にぴたり一致するインピーダンスと直流抵抗、
また、使用する真空管の時代背景をヒントに、全体のサウンドコンセプトをもつのものを、本機のためだけに特別に設計製作。
電源トランスは、回路設計にぴったりマッチングした、一切ムダのない電源設定のものを特別製作しております。
トランスの塗装には、使用する真空管の時代と、このアンプの雰囲気にあわせて新調色した、ブリティッシュグレー色・焼付け塗装を施しました。
トランスについては、真空管と回路・電気的動作のマッチングはもとより、
見た目のデザイン・求める音質について、行き届いた設計のトランスを搭載することが弊社で作るアンプの最大の特徴でございます。
これにより、真空管の能力と音質を最大限に生かすことができ、真空管ならではのとても良い音をご提供いたします。
シャーシ正面と、上面の番号レタリングは、すべて手作業でハンドペイントしております。
ハンドペイントは規格のフォントには存在しない書体ですから、一台一台オンリーワンの味のあるデザインとなります。
使用する色も全体の雰囲気に溶け込む色を選び、心をこめて文字を書き入れております。
使用する真空管についてご説明いたします。
本機に標準装備する出力管は、上写真 一番左の 1950年代 イギリス・ムラード社ブラックバーン工場製の EL33 です。
EL33 は純5極出力管で、非常に太いカソードと、大きな楕円型ラウンドプレートを有しています。
EL33 は発売当時、出力別にEL33、EL35、EL37の3種類をラインナップして発売されましたが、EL35は6L6Gに統合、EL37は後に改良され、EL34/6CA7の開発ベースの一部となります。
EL33については形を変えることなく、1940年代後期から1960年代中期まで、15年以上英国Mullard社のおもにBlackburn工場で生産され続けたロングラン商品ですので、
まだ比較的良質なストック球が入手可能です。
また、本機でオプションとして差し替えが可能なものとして、左から2番目より順に、英国Marconi-Osram製 KT61、英国Mazda製 6P25、英国Mazda製
6P1です。
(これらの真空管は本機に標準装備ではございません。別途ご購入下さい。)
KT61、6P25、6P1はすべてビーム4極管で、
KT61は後のKT66、KT88に通じる凸型ボックスプレート構造を有し、大きなL型放熱フィンが装着されています。
6P25は、真空管愛好家の中では有名なPEN45をそのまま6.3V、オクタルベース化したもので、古くはAC2PENが起源の、PEN45そのままの広帯域で都会的なサウンドを有しています。
6P1は、この中ではもっとも珍しい真空管ですが、テレビ回路で使用できるように、6P25をそのまま小型化したものです。若干さらにハイパービアンス化されているようですが、
オーディオ回路A級シングル動作では、6P25とほぼ同じ動作点で、EL33およびKT61とも互換で使用可能です。
(なお英国Mazda製6P1は、ロシア・中国名の6P1とは全く異なる球ですので御注意ください)
※ また、一部の資料で EL33、KT61、6P25と同格、互換とされている 6V6GT につきましては、ソケットのピン配置が同一で、同等のパワー出力である、ということだけで、
バイアス電圧やインピーダンス、動作規格がまったく異なりまので、互換球ではございません。(差し替えて使用できません)
初段球は、シャープカットオフ5極管の EF37(A) もしくは 6J7 を使用しています。 これらの真空管は互換球となっております。
また、本アンプではドライブゲインが必要ありませんので、EF37/6J7は直線性が良く、管内ノイズが少なくなる3極管接続回路で使用しています。
整流管につきましては、GZ32 (5V4)、または 5Y3G/GT を使用いたします。
(本アンプの標準装備はイギリス・ムラード社ブラックバーン工場製GZ32です)
内部配線は、後のメンテナンスの際にもすぐに対応できるように、すっきりと丁寧に配線することを心がけています。
それにより、電機の流れが交錯することがなく、とくにステレオアンプにおいてチャンネルセパレーションが悪化することを最小限にし、
周波数特性も良好となり、雑音の無い、なめらかで素直なサウンドが得られます。
ボリュームつまみは、弊社工場にて一つ一つ、真鍮丸棒から削りだして製作したオリジナルデザインのボールハット型ツマミを使用しています。
ツマミのデザインはアンプにとって非常に重要なファクターです。0.1mm単位で寸法を変えて、一つずつ旋盤で削りだして製作しており、
真鍮ムク材のため、重みがあり、普通のプラスチックやアルミ製のものより共振に強く、これ一つで圧倒的な高音質が得られます。
このアンプは、演奏者が何を考えて、どのように曲を作り、一体何を表現したいのか、という部分がうまく再生されることを一番に大切にして、
文化芸術が絶好調であった時代に開発の最前線で独自のアイデンティティで作られた真空管を、音質のエッセンスとして使用したパワーアンプです。
このアンプの音は、曲によって、表現される幅はとても多彩です。 クリアな音質や解像度の高さなど、ある一つの要素だけピックアンプされるような音ではなく、
楽器による音の違いはもとより、オーケストラの前列で演奏する人と後列で演奏する人の演奏表現のちがいや、それらによって作り出される多重ハーモニクスの美しさなど、
多次元でとてもバランスの良い人間的な味と、工業技術・芸術文化が両立した国で生まれた真空管ゆえに出力される、説得力のある音を聴くことができます。
EL33・KT61シングル ステレオパワーアンプ | |
仕様 | 入力1系統・ボリューム付き(真鍮削りだしボールハット型ツマミ) 出力 4 - 8 - 16Ω バナナジャック対応 電源100V ACINPUT 3Pインレット 消費電力80W 最大出力 3.5W + 3.5W(RMS) 周波数特性 30Hz-1db ~ 20kHz-1db、30kHz-3db NFB 7.5db シャーシ ブラックウォールナット無垢材 4隅R加工 表面オイルフィニッシュ 上面シルバーハンマートン焼付け塗装 ハンドペイントレタリング トランス 出力トランス、電源トランスとも本機の専用設計・手巻きトランス使用。 ブリティッシュグレー焼付け塗装 サイズ W 305mm、D 245mm(ツマミ等含まず)、H 180mm(真空管頭頂部まで) 重量 約9kg 付属品 電源ケーブル |
使用真空管 パワー管 EL33 (または KT61、6P25)×2、(標準装備 EL33) 初段管 EF37 / 6J7 ×2、 整流管 GZ32 / 5V4G / 5Y3G (標準装備 GZ32) |
|
保証 | 御買上日より3年間。 ただし真空管については、使用による自然劣化は保証対象外です。 その他保証対象外となる場合は以下の通りです。修理の際は費用を御請求させていただきます。 本来の使用法以外に使用された場合。 想定以上の使用法(つねに最大音量での使用等)・長時間使用による故障の場合 (想定使用時間:一日4時間)。 ホコリの多い場所、湿った場所、直射日光の当たる場所、通気の悪い場所など、環境の悪い場所でご使用された場合。 弊社以外で分解・メンテナンスをされた場合。 分解、改造等、お客様により本品に手を加えた場合。 真空管を誤ったソケットへ装着して通電した場合、また抜き差しの不手際による故障。 指定真空管を御使用されなかった場合。 また、弊社の判断にて、修理の際の別途実費をご請求させていただくことがございます。 |
価格 | 380,000円(税込418,000円) ※上記記載の標準装備の真空管付属 現在この商品は売約済みです。同様の商品はオーダーメイドにて製作承ります。 |
本機とおなじもの、もしくはご希望に応じた仕様にて新規製作をいたします。
ぜひ下記へお問い合わせ下さい!!
eightrictrans@arrow.ocn.ne.jp
またはお電話・FAXにて、お気軽にお問い合わせ下さい。
電話 052-908-0066 / FAX 052-503-5560
Manufactured by Eightric Transformers, Nagoya, Japan.
Copyright © Eightric Transformers. All right reserved.