WE329Aシングル 1.5W+1.5W ミニワットパワーアンプ

2016/3

今回は、ウエスタンエレクトリック製の小型出力管329Aを使用した、大人しい雰囲気のアンプを製作しました。

WE329Aは、トップグリッドタイプの小型ST管で、同社製の小型出力管349Aをさらに小型化したような特性の出力管です。
小型管とはいえ通信機器の重要なポジションで使われる設計の球ですので、手抜きの無い作り込みと、
超ロングライフ設計の優れた真空管です。

出力こそ大きくは望めませんが、長く聴いても飽きず、その範囲いっぱいに音楽を楽しめるアンプに仕上げました。





今回のシャーシはいつものブラックウォールナットから趣を変えて、329Aのイメージに合うよう、オーク柾目材を使用して端整な印象を狙いました。
表面はオイルフィニッシュ仕上げですので、肌触りが良く落ち着いた雰囲気で、
月日の経過と使用するにつれ徐々にアンティークな味わいが増してゆきます。










シャーシレイアウトは過去に製作したUY-238ステレオアンプと同様に、真空管を一列に配して、
各パーツがキチっと収まって小型シャーシながら存在感のある印象にしました。





電源トランス、出力トランス、チョークトランス(シャーシ内部)はすべてこのアンプの為だけに当方で専用設計・製作したものを使用しています。
329Aの動作特性は一般的に近いとされるUY-38や、6K6G/GT、WE349Aとはかなり異なっており、
最適動作点およびアンプの全体設計にぴたり適合した出力トランスを用いないと本領発揮できません。
シンプルな回路・小さな出力でも一切妥協せず、綿密な回路設計と実動での波形確認、動作点の割り出しにより
トランスの仕様を決定して巻線製作しています。






入出力端子類は接続しやすいように、アンプ後方・上面に一列に配置してあります。






シャーシ内部は各セクションに分けて、できるだけすっきりと配線を取りまとめ、
メンテナンスの際には誰がみても分かりやすいように備えてあります。
後にパーツの交換等を行う場合にも、目的のパーツのみを交換でき、他のパーツを掻き分けたり配線ミスの誘発をしないように勤めています。


今回使用したパーツについては、あえてオーディオ用と謳わないものや、何の変哲も無い普通品を選んでいます。
特別な真空管を用いるアンプだから、パーツもヴィンテージ品や、音が良いといわれるものを全てに使いたい。 と思うのがオーディオファンとして普通ですが、
特別な真空管を際出たせたいのであれば、むしろ他のパーツには後ろに下がってもらわないと、
何が何の音を出しているのか分からず、折角の真空管の繊細な音色が消えてしまうのです。

特にヴィンテージパーツの場合、ヴィンテージなら何でも良いという訳ではなく、現行パーツと同じように良し悪しは必ずあります。
また、避けられない経年劣化による音質の悪化もほぼ全てに起きていると考えるのが自然で、あまり沢山のヴィンテージパーツを一度に使うのは当方ではお勧めできません。
音の良いパーツがあった場合、それを真空管と同じようにピンポイントで使うからこそ、
そのパーツの良さが際立ち、音に彩を添えることができるのです。

またそれは、パーツのみならず、それらの組み合わせや、アンプの回路設計、全体の構成によっても音の出方は変ってくるものです。
当方では、何でもワンパターンな手法や、良いといわれるものに頼ったアンプ作りではなく、
ご依頼主様の求める音のイメージや、使用される環境を頭に思い浮かべながら、適材適所にて一つのアンプを製作しています。












使用真空管は、
出力管 ウエスタンエレクトリック製 329A (5極管接続)
初段管 ウエスタンエレクトリック 403B (又は6AU6と差し替え可)
整流管 80  です。

すべての真空管は、きちんと動作試験が行われた良品であれば、
無調整で差し替え可能になっています。
(WE329Aは旧ソ連製の互換球7P12Sとも差し替え可能です。)


最大出力は、1.5W + 1.5W (ノンクリッピング)
物理的な周波数特性は、35Hz(-1db) ~ 20kHz(-1db)です。
小出力シングルアンプとしては申し分ない周波数特性が確保でき、下から上まで何のストレスも無く音が出てくる感じです。
その中に、春の日差しのような柔らかな音色が見え隠れして、音楽の表情の変化をライトアップするような雰囲気があり、
夜中に一人でささやかな時間を楽しめるアンプに仕上がりました。
ハムや残留ノイズは、100db近い能率のスピーカーで耳を近づけても聞こえるか聞こえないか程度まで抑えてありますので
その分、小出力でもダイナミックレンジの広いサウンドです。



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